JellyPanic

「JellyPanic」は、大学の学祭向けに企画・制作したゲーム作品です。物理センサーを活用し、画面を傾けることで操作する、いわゆる「避けゲー」で、操作に用いる端末自体も電子工作で自作したものでした。

当時は、まだiPadが出始めの時期で、タッチパネルや加速度センサーなどを搭載したタブレット端末は一般に普及していませんでした。一方で、ゲーム業界では2006年末に「Wii」が発売され、人間の自然な動きで画面を操作する「フィジカルコンピューティング」と呼ばれる分野が盛り上がっていた時期でもありました。

私は、フィジカルコンピューティングの試みとして、傾きを検知するセンサーを使ったゲームを企画し、ハードウェア、ソフトウェア双方のデザイン、実装に取り組みました。

目指したのは、どの世代にも“触ってみたい”と思わせる、新しいゲームの提案です。

制作年/参画時期
2009年
形態
アプリケーション(Flash)、独自デバイス
種別
アプリケーション開発、UIデザイン
案件フェーズ
初期立ち上げ
チーム規模
1名(個人開発)
役割
デザイン、開発に関わる全て

センサーを買い漁り、何ができるかを考える

最初に取り掛かったのは、技術のベース作りです。まずは、PC上のアプリケーションとセンサーを連動させるプラットフォームとして、汎用基盤モジュールの「Gainer」を選定。GainerはFlashとの連携が可能であったため、過去の自作ゲームのソースコードを流用し、テスト環境を構築しました。

秋葉原でセンサーを何種類も買い漁り、ゲームの操作感に合ったセンサーを見定めていきました。

構想を実現するためのハードを整える

いくつか検証を行った末に、今回は「画面を傾ける」というシンプルなインタラクションで、ゲーム制作に取り掛かることにしました。当時は、安価なタブレット端末が普及しておらず、開発環境も未成熟だったため、構想を実現するにはハードウェアの制作から行う必要がありました。

活用したのは、USB接続の小型ディスプレイとGainerモジュール、そして加速度センサーでした。これらを一体的にパッケージングするためのプラスチック筐体を制作し、USBケーブルでPCと接続する形を取りました。

極力ルールはシンプルに、演出は楽しく

老若男女に「触ってみたい」と思わせるには、できるだけ操作やルールを単純化し、初見でもとっつきやすくする必要があります。また、今回は「画面を傾ける」という操作体系しか持たないという前提があります。このため、非常に単純なルールの中で、いかに楽しみを作り出すかという課題に向き合う必要がありました。

今回、「ゼリー」をモチーフとして、全体的に「ぷるぷる」とした動きを演出することにこだわりました。ゼリーの動きには、物理演算ロジックを用いることで、画面の傾きと連動した左右の動きが自然に見え、あたかも実物のゼリーを傾けて動かしているような感覚を作り出しました。

プレイヤーは、ゼリーを左右に動かしながら、上から落ちてくるゼリーを重ねていきます。4つゼリーを重ねられればクリアですが、一定周期で落ちてくるスプーンに当たるとゼリーを1つ失います。できるだけ短時間で、スプーンの直撃を避けて4つ重ねられれば高得点というルールです。

幅広い年齢層を笑顔に

学祭の展示で本作品を出展したところ、小さな子どもから大人まで、幅広い年齢層から注目を集めました。「画面を傾ける」という体験は、当時そこまで一般的ではなく、「まずは触ってみたい」という動機付けが上手くいったのだと思います。

意外だったのは、当時としては新しい操作体験だったにも関わらず、思っていた以上に来場者の慣れが早かったこと。最初は戸惑いつつも、すぐに操作を習得し、ゲームを楽しむ様子が覗えました。特に、ちびっ子たちの習熟の早さとゲームへの熱中度は興味深かったです。

直感的な操作体系は、老若男女に幅広く浸透しやすいということが、今回の作品を通して改めて実感したことでした。

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